TOPICS 2023.06.27 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」 第9回 初めて参加したライブで記憶に刻みつけられた
きゃりーぱみゅぱみゅさんの「もったいないとらんど」(前編)

声優・伊達さゆりのお気に入りや、心に残っているものを取り上げながら自らを語るフォト&インタビュー連載。第9回では、きゃりーぱみゅぱみゅの「もったいないとらんど」をピックアップ。これまでにもフェイバリットに挙げてきた彼女の楽曲の中で、とくに思い入れがある理由は――?

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水 衣装協力/natsuko shiokawa

自分の中の新しい領域に足を踏み入れた気がした

――今回の撮影場所となった「あさくら画廊」の印象から聞かせてください。
伊達 事前に見せていただいたロケハン画像を見たときの印象は「わからない……」でした(笑)。でも、実際に来てみると、すごくポップで……ポップという言葉が合っているのかもわからないのですが、それでいて人間の闇みたいなものも見え隠れしていました。ピンク色でそれが覆い隠されているというか。その表現がすごく素敵だなと感じました。アーティストの方が元々おばあさまが実際に住んでいたお家を改造している、というのは聞いていたのですが、お部屋の香りがなんだかおばあちゃん家っぽいなというのは感じましたね。畳もありましたし。でも、その畳の上に窓ガラスが散らばっていたりして、びっくりしました。どうしておばあさまの家でこのような形のアートを作ろうと思ったんだろう?という疑問ももちろん湧いてきましたし、怖さも感じましたね。

――「怖さ」はこの場所に来る前から予感していましたか?
伊達 実際に足を踏み入れてから感じました。普段、ラジオや配信など、何かお話するときには、ネガティブな言葉をなるべく使わないように心がけているんです。でも、ここでは「呪」や「殺」など、あまりいい意味で使われない言葉がかわいいポップなフォントで散りばめられていて、これまでの自分の想像力になかった、新しい領域に足を踏み入れた感じがしました。

――撮影した写真を見ると、思った以上に溶け込んでいましたね。
伊達 それはもう、衣装とメイクの力ですね(笑)。私も途中で写真を見せていただいて溶け込んでいるのが意外でしたし、自分ではまわりからどんな風に見えているのかがわからなかったので「こんな世界になるんだ」と驚きました。視覚から入ってくる情報が強すぎたので、場所の強さに負けないように、自我の強さが感じられる衣装や髪型にしていただきました。

歌っていたきゃりーさんの身振り手振りまで思い出せる

――今回はきゃりーぱみゅぱみゅさんの「もったいないとらんど」をテーマに挙げてもらいました。きゃりーさんが好き、ということは他の機会でも語っていますよね。
伊達 はい。小さな頃からCDを買ったり、MVを何度も見たりして、めちゃめちゃ大好きでした。ステージに立ってみたいと思うようになったのも、きゃりーさんがきっかけで、そこからいろいろなアイドルさんにハマりましたが、原点はきゃりーさんでした。

――「もったいないらんど」はライブで聞いた思い出があるそうですね。
伊達 小学生の頃にきゃりーさんがツアーで仙台に来てくれて、それが私にとって初めて参加したライブだったんです。客席で頑張って背伸びをしながらきゃりーさんを見ていました。輝いているきゃりーさんを見て、それだけで衝撃的だったのですが、セットリストの最後のほうで新曲だった「もったいないとらんど」が披露されて。当時、auのCMで使われていたのでサビに差し掛かった瞬間に「あの曲だ!」と気づいて、一緒に来ていた母に「CMで流れているやつだ!」と大興奮して話しかけたのをおぼえています。あのライブで見た「もったいないらんど」は、きゃりーさんがどんな風に曲紹介をして、どういう身振り、手振りをしながら歌っていたのか、今でも鮮明に思い出せるんです。それくらい印象に残っています。

――ちなみに、そのときのセットリストと思われるものをプリントアウトしてきたのですが……。『なんだこれくしょんツアー ~きゃりーぱみゅぱみゅの宇宙シアター~』、2013年10月18日、仙台サンプラザホール。
伊達 わー! そうです、これです! ちょっと泣いちゃいそう……。ちょうどこの日は、ライブが終わって家に帰ると、父が東京に転勤することが決まったという連絡が入ってきたんです。その後、地元にまた戻ってきてくれたのですが、とにかく落差が激しい一日でした(笑)。

――(笑)。そんな思い出ともセットなんですね。
伊達 そうなんです。それもあって、めちゃめちゃおぼえているんです。

「晴れが好き」と素直に言えない時期があった

――この記事は6月に公開される予定なので、おそらく梅雨がまだ続いていると思うのですが、雨にまつわる思い出はありますか?
伊達 あるときまで「好きな天気は何ですか?」という質問をされたときに、「雨」と答える人に憧れがあったんです。本当は晴れが好きなんですが、「感受性が豊かなんだろうな」と思われたくて、素直にそう言えない時期がありました(笑)。『おもひでぽろぽろ』に、主人公が好きな天気を聞かれて「くもり」と答えて、聞いた男の子が「同じだ!」と喜ぶシーンがありますよね。それを見たときも「なんでくもりが好きなんだろう?」と思っていました。

――でも、自分が聞かれても「晴れ」とは言えなかった(笑)。
伊達 そうなんです。「雨が好きかなぁ……」なんて答えていた、恥ずかしい思い出があります(笑)。雨の直接の思い出でいうと、中学生の頃、夏の豪雨で住んでいた地域が浸水してしまったことがあって。水たまりに足を突っ込んで、くるぶしまで浸かった足元を見ながら「どうしたらいいんだろう……」と立ち尽くしてしまったことがあります。最近だと、白い靴を買って履いているのですが、水を弾かない素材なので、雨が降ると泥で汚れてしまうんですね。だから雨の日は履かないようにしているのですが、突然の雨に見舞われたときには「どうにでもなれ!」という精神で家に帰ってから洗っています。……こうして思い出してみると、やっぱり雨は好きになれないですね(笑)。endmark

撮影協力

あさくら画廊
住所/東京都足立区西保木間2-6-22
開館時間/09:00時~18:00時(水曜日休館)