TOPICS 2023.07.27 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」 第10回 小さな選択の積み重ねが自分を作ると気づいた
阿部真央さんの「どうしますか、あなたなら」(前編)

声優・伊達さゆりのお気に入りや、心に残っているものを取り上げながら自らを語るフォト&インタビュー連載。第10回のテーマは、阿部真央の「どうしますか、あなたなら」。日常の葛藤がコミカルに描かれるMVとともに、聞き手に訴えかけてくるような奥深さを感じるという楽曲の魅力を語ってもらった。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水

入り組んだ路地と階段が続く、不思議な街

――第10回は、新宿区の荒木町を舞台にしての撮影でした。
伊達 テーマとして挙げさせてもらった「どうしますか、あなたなら」は、MVをよく見ている楽曲で、日常を切り取ったような場面や、どこにでもある街中の様子がたくさん映像に出てくるので「そんな場所に行ってみたいな」とぼんやり考えていました。前回(第9回)は作り込まれた屋内でしたが、それとは正反対で、面白いところだなと思いました。

――楽曲やMVのイメージから「迷っている」雰囲気を出せればいいなと思っていました。
伊達 衣装もボヘミアンな感じのものを用意していただきました。普段あまり着たことはなかったのですが、じつはこういうエスニック系のテイストが大好きで、お店を見かけると入りたくなってしまいます。今使っているポーチもそういうお店で買ったものなんですよ。だから今回の衣装やメイク、髪型はドンピシャで好きな感じだったので、撮影前からテンションが上がっていました(笑)。

――荒木町はいわゆる「飲み屋街」として有名なのですが、昼間はもの静かで、独特な空気が漂っている街です。
伊達 初めて来ました。今はお昼なので「飲み屋街」と言われてもあまりピンと来なかったというか。路地裏には住宅が並んでいるので、本当にここが夜になると化けるのかな、と不思議な印象がありました。

――路地が入り組んでいるので、現在位置を把握するのがけっこう難しいんですよね。直線距離と実際に歩く距離の感覚が違うというか。
伊達 私も集合場所にたどり着くまでに、マネージャーさんと何度か迷いました。昼間に歩いていると、このあたりはなんだかジブリ作品に出てきそうな雰囲気で、好きな感じでしたね。

――伊達さんが20歳になってもうすぐ1年が経ちますが、お酒が飲める場所への憧れや、実際に訪れた経験はありますか?
伊達 いや~……行けばきっと面白いので、皆さんそういう場所に行くと思うのですが、まだひとりで行ってみたい、と思うことはないです。地元の仙台だと、国分町(こくぶんちょう)というところが「飲み屋街」として有名なのですが、私自身は行ったことがなかったですし、東京で大人の街といえば歌舞伎町がパッと思い浮かびますが、日中に近くを通ったことがあるだけで、夜に行ったことはないです。怖いけれど、ちょっと行ってみたいというか、怖いのは苦手だけどちょっと面白そうなホラー映画を見ようかな、どうしようかな……みたいな感覚が近いかもしれないですね。

楽曲との出会いは、小学校のクラスメイトがきっかけ

――今回のテーマは阿部真央さんの「どうしますか、あなたなら」ですが、この楽曲を選んだのはどういった理由でしょう?
伊達 阿部真央さんは小学生の頃から聞いていました。クラスに阿部真央さんの楽曲をずっと歌っている子がいたんです。「ロンリー」という楽曲なんですけど。それが頭から離れなくて。ただ、これは以前の連載でもお話したと思うのですが、私は誰かが聞いている楽曲が気になっても、その人に直接聞きにいけなくて(笑)。

――第1回でそんな話をしていましたね。
伊達 なので、その子が歌っていた歌詞だけをおぼえて、家に帰ってから検索して「あれは『ロンリー』という歌だったんだ」と知りました。まだ小学生だったので、当時はそこから阿部真央さんについて調べたり、他の楽曲を探したりはしなかったのですが、最近になってふと、「あの歌詞はどういう意味だったんだろう?」と気になって。そこから阿部真央さんの楽曲を聞き直すようになったんです。

人生が大きく変わるのは、日常の選択の積み重ねだと思う

――「聞き直し」ブームが来たのは、どれくらい前だったのでしょうか?
伊達 2~3カ月前、本当に最近です。とにかく楽曲がたくさんあって。自分を奮い立たせるような楽曲から、日常のままならない思いを歌にしたもの、歌詞は強烈だけど歌声はわりと穏やかな楽曲があったかと思えば、感情が剥き出しになっていて、叫んでいるような歌声のものもあったり。その幅広さと歌声に惹かれて「阿部真央さん、もっとちゃんと聞かなきゃ」と思ったんです。

――その中でも、この楽曲に惹かれたのはなぜですか?
伊達 曲名に惹かれたのも一因ですね。阿部真央さんの楽曲って、曲名からはどんな内容なのかわからない、という印象があって。とくに「どうしますか、あなたなら」は聞き手に訴えてくるようで印象的でした。歌詞だけを追っていくと「人生の大きな二択の決断で迷っている」というイメージだったのですが、MVでは、どちらの階段を進むか、分かれ道をどちらに進もうか、どちらから食べようか……といった、みんなが日常で経験しているような、何げないシーンがたくさん切り取られていたので、そのギャップもすごく好きでした。でも、たぶん、人生が大きく変わるのはそういった小さな選択の積み重ねだと思うんです。そういう奥深さも感じる楽曲なんですよね。endmark

撮影協力

百舌の蔵
住所/東京都新宿区荒木町12−5
営業時間/11:00時~不定(木曜、土曜、日曜、祝日定休)