TOPICS 2026.06.02 │ 17:30

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』スタッフリレーインタビュー⑧
yonige(OP主題歌・第8話挿入歌)インタビュー

第8話では劇中曲を際立たせる演出が印象的だった『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花(以下、上伊那ぼたん)』。インタビュー連載の第8回では、その劇中曲とOP主題歌「芽吹くとき」を手がけたyonige(ヨニゲ)のふたりをクローズアップ。原作との出会いから4曲が出来上がるまでの経緯を明かしてもらった。

取材・文/太田祥暉(oriminart)

OPは『上伊那ぼたん』の世界観を凝縮した歌詞

――TVアニメの第8話ではyonigeの楽曲が3曲、劇中曲として使用されましたが、もともとのオファーはOP主題歌だけだったそうですね。
牛丸 そうですね。お話をいただいてから原作マンガを読んだのですが、普段はバトルやアクションが中心のマンガを読んでいるので、独特の間やコマ割りに最初は戸惑っていたんです。でも、読み進めていくうちにそのテンポ感が気持ちよくなっていきました。
ごっきん 私も最初はめちゃくちゃ戸惑いました。でも、だんだんぼたんたちの日々が眩しく感じるようになっていったんですよね。原作をある程度読み込んだ頃には、私たちに『上伊那ぼたん』のOP主題歌でお声がけくださった理由が、腑に落ちていた気がします。
牛丸 ぼたんたちのやりとりに共感できるポイントが多かったので、歌詞もすらすらと書けましたね。

――OP主題歌「芽吹くとき」を作るにあたって、意識したことを教えてください。
牛丸 最近のyonigeの楽曲は、サポートメンバーの土器(大洋)さんと作ることが多いのですが、土器さんとの打ち合わせで「春から始まる物語なので、そのOPであれば明るく、物語が始まる予感に満ちた、春の風が吹いているような雰囲気にしたい」という方針に決まりました。
ごっきん ただ、その段階ではもう一案の楽曲が存在したんですよね。そちらはもっとロックサウンドに振り切ったものだったのですが、最終的に「芽吹くとき」が採用されることになったんです。
牛丸 もともとオファーをいただいた際は「あまり主題歌であることは意識せず、yonigeさんらしいバンドサウンドの楽曲にしてください」と伝えられていたんです。私たちにとっても再メジャーデビュー、その第1弾シングルですから「yonigeらしいサウンドにしよう」ということはかなり意識していましたね。

――とはいえ、TVアニメのOPですから、他の楽曲制作とは異なる部分もあったかと思うのですが……。
牛丸 たしかに、OPアニメの尺に合わせることも考えないといけないですからね。制作途中ではBPMを速くするなんてこともしていました。以前、『コールミー・バイ・ノーネーム』というTVドラマのED主題歌(「Without you」)を作ったときは、尺の指定がなかったんですよ。その点は以前よりも難しかったかもしれません。
ごっきん 余談ですけど、『コールミー・バイ・ノーネーム』も『上伊那ぼたん』と同じく女の子の関係性を描いたお話だったので、ファンの方々も「yonigeってそういうバンド!?」と盛り上がってくれているのは観測しています(笑)。
牛丸 1stアルバムのタイトルも『girls like girls』だし……。意識したわけではないんですけどね(笑)。話を戻すと、メロディラインはフルサイズを制作する際に、1番と2番とで同じAメロであっても展開を変えるように意識していました。
――歌詞はすらすらと書けたということでしたが、『上伊那ぼたん』のストーリーのどういった要素に注目したのでしょうか?
牛丸 ぼたんといぶきの関係性ですね。そこに私が抱いていた個人的な思いも重ね合わせました。たとえば「炭酸が抜けるより早いスピードで」は、いぶきのしゃっくりから連想したフレーズですし、「季節が進むことをためらわないでね」も、ぼたんのセリフを意識していて、かなりストレートに『上伊那ぼたん』の世界観を凝縮した歌詞になっています。

原作を読んでいた頃からあかねのことは応援していた

――楽曲が完成して、アニメのOP映像を見た際の印象はいかがでしたか?
ごっきん 最初に見たときはとにかく驚きました。「ヤバいかも!」ってチームのみんなに言っていましたね(笑)。自分たちの楽曲がテレビから流れることだけでもうれしいのに、映像も素晴らしいなんて……本当にいいご縁をいただけたなと感じています。
牛丸 でも、私はいまだに自分の声が映像と一緒に流れることに慣れないんですよ。しかも、「ねえ」は歌詞が文字として画面に映るじゃないですか。思わず「ひぃ!」って声を上げてしまいました(笑)。

――なるほど(笑)。冒頭で少し触れたように、第8話では「Don’t」「Wet」「しがないふたり(re-arrange ver.)」という楽曲が流れますが、これはどのタイミングで決まったのでしょうか?
牛丸 「芽吹くとき」が完成してすぐだった気がします。
ごっきん 話があったときは、レーベルからも「3曲とも既存曲でも大丈夫なんですけど」くらいの温度感だったんです。ただ、原作を読み込んだ私たちとしては「それは違うのではないか……」と。既存曲にがっつり『上伊那ぼたん』の世界観と重なるものが少なかったので「基本的には書き下ろさせてほしい」とこちらからお願いして、第8話のストーリーをうかがってから新曲ふたつと既存曲のアレンジを制作しました。

――まず、あかねがスタジオから帰るシーンで流れた「Don’t」についてはどのような思いを込めて作ったのでしょうか?
牛丸 あかねの雰囲気に合うことを第一に考えていました。バンドをやりたいけれど、なかなかうまくいかない。その鬱屈とした気持ちを捉えたいなと。
ごっきん 音楽活動をしていたら、自然とメンバーとの意識の違いややる気の差に悩む場面は出てくると思うんですよ。なので、原作を読んでいても、あかねのことは自然と応援していて。その気持ちが詰まった楽曲になったと思っています。
牛丸 自分もやっぱり、登場キャラクターの中に近いものを感じていたんですよ。あかねとやえかとの出会いや、郡上先輩がタバコを吸っているところにも、自分を投影できる部分があったので……。そんな思いも反映しつつ作りました。
ごっきん ライブしたら楽しい、シンプルにカッコいい楽曲ですね。

――街中を歩くシーンで使用された「Wet」については?
牛丸 キャラクターの関係性にめちゃくちゃ湿度を感じたので、しっとりとした雰囲気を意識しました。
ごっきん この曲は仮タイトル時点から「Wet」だったんですよね。「芽吹くとき」は「上伊那」でしたし、「Don’t」は(ナードを意味する)「ND」だったんですけど、「Wet」は「Wet」のままで。
牛丸 もう少しひねってみようか、とも考えたんですけど、やっぱり彼女たちの関係性は「Wet」だろうと思ったんです。その印象を素直に反映した楽曲になっています。

――そして3曲目、いぶきとぼたんが出かけるシーンでの楽曲は、2017年に発表された「しがないふたり」のアレンジバージョンですね。
牛丸 「しがないふたり」はもともと思い入れのあった楽曲なのですが、技術や知識がまだまだ未熟な時代に作ったものだったんですよ。なので、いつかアレンジしたいと考えていたところに今回のお話をいただき、「もしかしたら合うのでは?」と考えてこちらから提案させてもらいました。歌詞はこのシーンのいぶきとぼたんの様子よりもシリアスな内容なのですが、アコースティックな雰囲気はとてもマッチしているように感じています。
ごっきん 原曲からかなりいい脱皮をしたアレンジになったと思っています。元の「しがないふたり」が好きだった人も、受け入れてくださるかたちになったはずです!

――このインタビューは第8話の放送前に実施しているので、おふたりもまだ完成した映像は見ていないんですよね?
ごっきん 早く見たいですね。
牛丸 ここまでのエピソードを見ていて、「スタッフさんたち、めっちゃカッコいいなぁ」と思っているので、安心して待っていますけどね。第4話の、紫陽花が映るなかでセリフがないシーンも素晴らしかったですし……。
ごっきん 第3話の、レコードを聴いた瞬間に色鉛筆で描かれたような画になるところも挑戦的で。曲を作っていたときは、どんな感じで流れるのか想像できなかったんですけど、今は「こうかな?」と頭の中にイメージが浮かぶようになってきました。
牛丸 そんな挑戦的なタイトルにお声がけいただいて、とてもうれしいです。初めて関わったアニメが『上伊那ぼたん』でめちゃくちゃよかったですね。endmark

yonige
よにげ 大阪寝屋川出身。2013年結成。牛丸ありさ(Vo&Gt)、ごっきん(Ba&Cho)の2人からなるロックバンド。ソリッドなバンドサウンドとポップなメロディ、恋愛や人生観をリアリティのある言葉でつづった歌詞が10〜20代を中心に共感を呼び、2015年8月リリースの「アボカド」のMVが話題を集め、2017年にメジャーデビューし、2019年8月13日の日本武道館ワンマン公演をソールドアウト。その後も精力的に音源リリースとライブ活動を行いながら、2024年1月に3rdアルバム『Empire』をリリースし全国ツアーを開催。2025年3月15日には、バンド初となる日比谷野外音楽堂でのワンマン公演『yonige"I'mBack"』を開催した。同年5月29日からはバンド初の試みとなる47都道府県ツアー『yonige〜Homingtour〜』を完走。2026年春には、ソニー・ミュージックレーベルズにて再メジャー契約、併せて4月クールのTVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』OP主題歌が新曲「芽吹くとき」に決定した。
作品情報


『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』
毎週金曜24:00~ TOKYO MX他にて好評放送中!

  • ©塀(秋田書店)/上伊那ぼたん製作委員会