TOPICS 2023.12.23 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」 第13回 健気なかわいらしさが心をとらえた
MINT mate boxさんの「君のことで悩みたい」(後編)

MINT mate boxの「君のことで悩みたい」をテーマにお届けしてきた、伊達さゆりのフォト&インタビュー連載の第13回。年内最後の記事でもある後編では、楽曲の歌詞と近況を照らし合わせながら、自身の変化とともに2023年を振り返る。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水 衣装協力/Melody BasKet、F i.n.t

前向きな変化と、新しく生まれてきた不安

――メンバーの過去のインタビューによると、「君のことで悩みたい」の「君」はバンドメンバーやファンのメタファーだそうですが、今の伊達さんにとって「このことで悩みたい」と思うことはありますか?
伊達 今、私自身の気持ちが前向きになっているからかもしれませんが、「お仕事」ですね。お芝居や歌、ダンスなど、いろいろなことに取り組ませてもらっていますが、この業界に入る前は、たとえば歌をお仕事にしたら、歌だけを集中的に学んでいくのかなと思っていたんです。でも、実際は目標に向かう道のりの間に、いろいろなことを吸収していけるんだとわかってきました。一見、今のお仕事に関係ないところにも、人生を過ごしていくうえで大切なことがたくさんある。そういう環境にいさせてもらっているので、今はお仕事に「悩む」ことができるのが、すごく面白いなと感じています。

――難しい課題に取り組んだり、新しい現場での体験が楽しい、ということですね。
伊達 不安もめちゃめちゃあるのですが、それを乗り越えたときに昨日の自分とは何か違うという感覚になれるんです。振り返って「あそこはこういう風にやればよかったな」と思うこともあるのですが、それも含めて「自分、頑張ったじゃん」と思えて、すごく達成感があります。

――そう思えるようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
伊達 きっかけは……うーん、何だろう。舞台やドラマの現場に参加したことはやっぱりすごく大きくて。現場にはマネージャーさんと一緒に行くのですが、お芝居をする際はひとりになりますし、わからなくて教えてもらうことばかりで。台本をいただいた段階で「こういう風にやってみようかな」と自分なりに考えてはいるんです。それはドラマに限らず、アフレコやレコーディングなどでもそうなのですが、現場で誰かと会話する中で「ああ、こういう選択肢もあるんだ」と発見できるのがすごく楽しいです。そういう楽しさが芽生えてきたのは、本当に最近になってからですね。

――不安よりも、現場で得られるものに対する期待が大きくなってきたので、前向きな気持ちでいられるということなのかなと思います。
伊達 でも、一方で変化を感じるからこその不安もめちゃめちゃあって。夜、お仕事から帰ってきて「ちゃんと挨拶ができていたかな」とか「私、謙虚になれているかな」と考えて眠れなくなることもあります。今までは目の前のことに精一杯でそんなことを考える余裕はなかったのですが、そういうことが気になるようになってきました。この連載を見てくださっている方や応援してくださっている方に対して、初めの頃――といってもまだお仕事を始めて3年目なのですが――その頃と比べて変わってしまったと思われていないかなと。「そういうことは自分ではなかなか気づけない」と聞いたりもしますから。

自分にないものを持っている子たちの中で考えたこと

――「君のことで悩みたい」の歌詞に関連してもうひとつ、「きっと/君に惹かれる理由ならさ/わたしに無いもの/たくさん持っていそうで」フレーズがあるのですが、「自分にないものを持っている人」と聞いて思い浮かぶ人はいますか?
伊達 たくさん思い浮かびますね。とくに年齢の近い人を見ているとそんな風に思うことが多いです。生きてきた年数は同じくらいなのに自分とは全然違う、素敵だなと思うような人を前にすると「この子はどういうものを今まで見てきて、どういうものに感動してきたんだろう」と考えますし、今まではそのあとで、たいてい落ち込んでいました。それは、東京に出てくる前からずっとそうで。頭のいい子やすごくメイクが上手な子、スタイルがいい子を見て「いいなぁ……」と思いつつ、少しでも近づこうと試行錯誤してみてもうまくいかない、ということの繰り返しでした。

――「今までは」ということは、現在は少し違うのでしょうか?
伊達 今は、むしろ自分にないもの、自分が欲しいなと思えるものを持っている子たちと一緒にいるのが当たり前で、そんな中で「どうすれば自分らしくいられるだろう」と考えるようになってきました。最初の頃はそんな風に思える日と思えない日がありましたが、環境に慣れてきたということなのかもしれないです。

――伊達さんの場合、基本的に「スペシャルな人」しかまわりにいない環境ですからね。逆に自分の中で「ここは他の人はあまり持っていないかもしれない」と思えるところはありますか?
伊達 なんだろうな……私は人に寄り添うことが苦手で、誰かが落ち込んだりしていてもすぐに助けてあげたりはできないのですが、その分、他の人よりも少しだけ深くまわりを観察できているかもしれないです。

――困っている人のことを周囲よりも早く見つけられたり?
伊達 そうですね。小さな頃から心配しなくてもいいようなことまで考えてしまう癖があって、まわりからよく「大丈夫だよ」となだめられていました。だから、そういう感覚は他の人よりも強いのかな、と思うことはありますね。

2023年の目標は達成? そして来年の目標は?

――この記事はクリスマスの頃に公開される予定ですが、クリスマスの思い出はありますか?
伊達 地元の宮城にいた頃は家族とプレゼント交換会していたのですが、東京に来てからはできていないので、それが少し寂しいですね。宮城はいちおう北日本なので、東京と比べると雪も多く、雪が積もると学校に行くのがしんどいなと思うことはありました。でも、本当の北国育ちの方の前ではとても言えないですね(笑)。

――宮城では12月になるとそれなりに雪が降るのでしょうか?
伊達 最近は温暖化の影響もあるのか、それほど降らないです。やっぱり1月、2月が多いですね。でも、私が小学生の頃は12月になるとよく校庭に雪が積もっていました。ランドセルを背負ったまま雪遊びをして、何度も転んだりしながら、みんなとお家に帰っていましたね。だから、クリスマスというと雪遊びのイメージです。

――ちなみに昨年12月に公開した連載記事では「来年は健康に気をつけて過ごしたい」と話していたのですが、2023年の「健康度」はいかがでしたか?
伊達 けっこう健康だったような気がしますね。体調を崩すこともなかったので、目標は達成できたんじゃないかと思います。点数をつけると、100点満点中70点くらい。

――あれ、意外と低くないですか……?
伊達 言ったあとに自分でも「低いな」と思いました(笑)。実際は85点くらいですかね。マイナス15点は、体調ではなくて、はしゃぎすぎてどこかにぶつけてしまったり、そういうことが多かった分です。気づいたら足に小さなアザができていたりするんですよね……。他にも、ファイルから紙を取り出すときにあわてて指を紙で切っってしまったり。だから来年は「落ち着いて怪我に気をつける」、これを目標にしたいと思います(笑)。endmark

撮影協力

HATTIFNATT 高円寺のおうち
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