TOPICS 2023.03.02 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」第5回 感情がストレートに乗った歌詞が響く
あいみょんさんの「RING DING」(後編)

伊達さゆりのフォト&インタビュー連載の第5回。あいみょんの「RING DING」をテーマにお届けしてきた後編では、同じ歌手として感じる彼女への印象から、誰かに元気や励ましを贈る立場として、自身の考えを語ってもらった。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水 

聞いていて「なんでこの気持ちがわかるんだろう」と思う

――中編ではあいみょんさんの人間的魅力について聞きましたが、楽曲全般や同じ歌手として「あいみょんさんのここがすごい」と思うところを教えてください。
伊達 歌詞に注目しながら聞いていると、感情をそのまま歌に乗せていらっしゃるな、と感じるんです。悩みやうまくいかないことがあったときに「なんで思うようにならないんだろう」と自分の中で渦巻いている感情って、たとえば、それを誰かに話すときよりもずっとラフでささくれていますよね。そういうラフさをいっさい隠さずに歌詞に表現できるから、たくさんの人が共感できるのかな、と思います。実際に私もそうでしたし、自分の中で感じるモヤモヤがそのまま歌われていたり、言い当てられているようで「なんでこの気持ちがわかるんだろう?」と思うんです。中でも「RING DING」はとくにそう感じるんですよね。

――事前に「あのさプライドなんて似合わないし 人間らしさ出していこうよ」というフレーズが印象的だと言っていましたが、他に好きなフレーズはありますか?
伊達 2番の歌い出しの「無理に笑えとは言わないけど 一緒にいて正直楽しくない」というところがすごく刺さりました。私は「正直楽しくない」と言われた側で、つい最近もそんなことがあって。実家に電話をかけて話していたのですが、ちょっと私がイライラしていたタイミングで、親から「今日は何があったの?」と聞かれても「仕事」とか単語を返すだけだったり、「機嫌が悪いのを察してほしいアピール」をしてしまったんです。「そんな気分だったら電話してこなくてもいいから、機嫌がいいときにかけてきてよ」とちょっと叱られてしまいました(笑)。悩んでいると、どうしても考えが幼くなってしまうんですよね。

――家族と仲のいい伊達さんでも、そういうことがあるんですね。
伊達 そういうこともあるんです。むしろしょっちゅうあります(笑)。

励ます側としての距離感

――「RING DING」は元気をもらえる楽曲だと思ったとのことでしたが、伊達さんが身近な誰かを元気づけたり励ましたりした経験はありますか?
伊達 振り返ってみたのですが、私はいつも誰かに励まされてばかりだった気がします。自分から「大丈夫?」と声をかけにいった記憶があまりないんですよね。逆に自分が落ち込んだときに、見守ってくれるような子たちがまわりにずっといてくれました。「見守ってくれる」というのが私にとってはすごくありがたいんです。落ちこんでいる原因を自分で解決できないと「こんな小さな問題なのにどうしてひとりで解決できないんだろう」と悔しくなってしまうこともあって。もしかしたら自分以外にもこんな気持ちになる人がいるのかな、と思いますし、困っていそうな子がいたら、目は離さずに近くにいてあげて、求められたらすぐに手を差し伸べる、という距離感がいちばんいいのかな、と思ったりもします。

――困っている人を見ると、なんとかしてあげたいけど、何をしてあげればいいんだろう、と戸惑ってしまうこともありますよね。
伊達 わかります! 私もきっと同じで、相手が求めているものがすぐにわからないから、まずはそばにいてあげよう、と言い聞かせているのかもしれないです。

歌で誰かを元気づけるために必要なこと

――一方で伊達さんは、自身の表現でたくさんの人に「元気を与える」立場でもあります。歌やお芝居などのパフォーマンスの際、そういったことを考えることはありますか?
伊達 たしかに誰かを励ましたり、「前を向いていこうよ」といった内容の楽曲をたくさん歌わせてもらっていて、そういうときは「これを聞いた人が笑顔になってくれたらいいな」と思いながら歌っているのですが、そのためには、まず自分が元気でないといけないんですよね。元気じゃない状態で歌ったもので、聞いてくださった方が笑顔になったり元気づけられるはずがない、と思っていて。

――そう思うようになったのはどんなきっかけからだったのでしょうか?
伊達 歌を聞いてくださった方からの「聞いたよ!」とか「伊達ちゃんが歌っているこのフレーズに勇気をもらったよ」というメッセージやお手紙を見ていて、「無理に作ってはダメなんだな」と思ったんです。自分の感情やそのときの自分をとりまく環境が、声に乗るエネルギーとして直に伝わってしまうお仕事なんだ、と。あいみょんさんの「RING DING」などはまさに自分がその立場に立たないと出てこない感情が歌われていると思いますし、自分も表現する立場としていろいろな経験をするべきなんだなと思います。「あのとき自分が感じたあの感覚に似ているな」とか、そういった引き出しをもっと増やさないと、歌詞の意味や楽曲のイメージをしっかりと理解できないですし、ぼんやりとした印象のまま歌ってしまうのは楽曲に対して失礼ですよね。失敗も成功もたくさん通過することで考え方が深まっていくと思うので、とにかく今は自分の経験を増やしていかなければいけないなと思っています。endmark

伊達さゆり
だてさゆり 9月30日生まれ。宮城県出身。Apollo Bay所属。『ラブライブ!スーパースター!!』一般公募オーディションを経て、澁谷かのん役で声優としてデビューを果たす。他の出演作に『英傑大戦』(池田せん役、巻姫役)『アサルトリリィ Last Bullet』(石塚藤乃役)など。趣味は歌を歌うこと。特技はよさこい。  Twitter/@SayuriDate  Instagram/sayuridate_official
撮影協力

柴又ハイカラ横丁&おもちゃ博物館
住所/東京都葛飾区柴又7-3-12
電話/03-3673-9627
営業時間(ハイカラ横丁)/10:00~18:00(不定休)
開館時間(おもちゃ博物館)/11:00~18:00(土曜・日曜・祝日のみ開館)