TOPICS 2023.01.30 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」第4回 back numberさんの
「黒い猫の歌」から教わった“自分らしさ”への向き合い方(中編)

第4回にしてフェイバリット・アーティストであるback numberの「黒い猫の歌」がテーマとなった伊達さゆりのフォト&インタビュー。連載の中編では、自身をとりまく環境とともに変わっていったという楽曲の捉え方や、“自分らしさ”に対する認識について語ってもらった。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水 衣装協力/ha | za | ma

東京に来てから気づいた楽曲の深み

――初めて「黒い猫の歌」を聞いたのはいつだったのでしょう?
伊達 高校時代の通学中でした。そのときにはもうback numberさんが大好きだったので、片っ端から聞いていたのですが、その中の一曲として耳にしたのが最初だったと思います。

――2016年発表の楽曲ですが、リリース直後に聞いたというわけではなかった?
伊達 そうですね。フル尺のMVが公開されたのがわりと最近で、それから耳にしたので、2年半くらい前なのかな。前編でお話ししたように、初めて聞いたときにインパクトをすごく受けたわけではなくて、高校生活のあと、東京に来て関わる人やお仕事での経験が増えていくなかで楽曲の意味を捉えられるようになっていきました。

オーディションを受けなかった自分のことを考える

――back numberのものに限らず、聞く時期によって捉え方が変わっていった楽曲はありますか?
伊達 私はアイドルの方の曲を聞くことも多いんですが、それでいうと乃木坂46さんの「帰り道は遠回りしたくなる」もそうですね。私がとくに好きだったメンバーの方が卒業するタイミングの楽曲で、MVや歌詞で彼女がアイドルのオーディションを受けた世界と受けていない世界がパラレルに描かれているのですが、大好きでずっと聞いています。

――伊達さんの境遇とも重なりますね。
伊達 そうなんです。やっぱり自分がオーディションを受けてこのお仕事を始めてから、ふたつの気持ちが交わっていく感覚がすごく伝わるようになりました。「別の世界だったら、私は何をやっていたのかな?」とか「宮城にまだ住んでいたらどうしていただろう?」とか、今でも聞きながらよく考えるんです。きっと皆さんにも多かれ少なかれ、そういう場面があるとは思うんですけど。

はっきりした“自分らしさ”にこだわらなくなった

――「黒い猫の歌」でとくにお気に入りの部分はどこですか?
伊達 メロディも歌詞も全部が大好きなのですが、一番のサビの「本当の自分はどこにいるんだ」という部分は自分が悩んでいる、感じていることを素直に言ってくれているようで、すごく好きです。サビの最後の「足して混ぜて出来たものが 綺麗な色じゃなくても」も印象的ですね。「いろいろな色を混ぜれば混ぜるほど暗い色になっていく」ということを中学の頃に教わって、自分が絵を描くときは「そういう色にならないように気をつけよう」と思いながら絵を描いていました。でも、実際に混ぜ合わせて出来た色は単純に暗いだけでもないし、何度も迷いながら出来上がったものに自信を持っていいんだ、と言ってもらえたような気がしました。

――伊達さんのお仕事はとくに「個性」を求められる世界なので、ここ1~2年でこの楽曲の存在が大きくなるのはよくわかる話だと思いました。
伊達 いつも、自己紹介やプロフィールを書くときに「『特技』の欄、これでいいのかな?」と思ったりするんですよね(笑)。「『長所』もこれでいいのかな?」とか。だから、ある時期までは“自分らしさ”をはっきり表現したいと思っていたんですが、はっきりさせることにこだわらなくてもいいんだと思えるようになりました。いろいろな色が混ざることで、結果的に暗い色やくすんだ色になっても、それは今までの経験が生きている証拠だから、たくさん失敗しても大丈夫だよ、と。いろいろなことに挑戦していこうと思えたきっかけの楽曲です。

――身近な人や尊敬する人に「人間、いろいろな振れ幅があっていいんだよ」と言ってもらえるのって、すごく大事なことだという気がします。
伊達 そうですね。さらにそれが音楽に乗っていることが大事だと思うんです。実際に「私って何色かな?」と誰かに聞くことって、あまりないですよね。私も「こういう悩みって、みんな心に秘めていたりしないのかな?」と思っていたんですけど、「黒い猫の歌」のMV動画に「共感しました!」といったコメントを見かけると「やっぱりみんな思ってたんだ」と仲間を見つけられた気がして。それがすごくうれしいんです。

――ちなみに今回、「黒猫」にちなんでネコミミを付けてもらいましたが、猫にまつわる思い出などはありますか?
伊達 それが……まったくといっていいほど、猫とのエピソードがないんですよね。見ているとまったり癒されますし、飼っている友達はいるのですが、そういえば猫と遊んだりしたこともないんですよね。祖母の家では犬を飼っていたので、犬と触れ合った思い出はあるんですけど。endmark

伊達さゆり
だてさゆり 9月30日生まれ。宮城県出身。Apollo Bay所属。『ラブライブ!スーパースター!!』一般公募オーディションを経て、澁谷かのん役で声優としてデビューを果たす。趣味は歌を歌うこと。特技はよさこい。  Twitter/@SayuriDate  Instagram/sayuridate_official