TOPICS 2023.05.25 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」第8回 いつかこんな風に思える日が来てほしいと感じた
YOASOBIさんの「アドベンチャー」(後編)

伊達さゆりのフォト&インタビュー第8回。後編は楽曲の下敷きとなったエピソードとも関連する「ひとり暮らし」や「修学旅行」について。そしてYOASOBIの「アドベンチャー」の中からとりわけ心を動かされたフレーズを挙げてもらった。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水

どんな状況で聞いても心になじむ、透明感のある声

――「アドベンチャー」以外にもYOASOBIさんの楽曲はよく聞くそうですが、他に好きな曲目を挙げると?
伊達 最近だと、現在放送されているTVアニメ『推しの子』のOP主題歌の「アイドル」も別の機会に語りたいくらい、めちゃくちゃ好きです。他では「群青」も好きですし、コアな楽曲まで網羅しているわけではないのですが、代表的なものはひと通り聞いていますし、どれもお気に入りですね。

――YOASOBIの楽曲はどんなところが好きですか?
伊達 最初に聞いたとき、幾田りらさんのボーカルが、人間らしさをあまり感じさせない声をしているなと感じました。言い方が難しいのですが、音程やピッチに揺らぎがなくて、歌詞やメロディに込められた思いがスッと入ってくる声質だと思うんです。聞いている自分がいっぱいいっぱいな状況でも入り込みやすいですし、普段の生活で何かBGMがほしいなと思ったときに流してもなじんでしまう。「こういうときに聞きたい」というよりも「いつでも聞いていたい」という声をされていて、それがすごく魅力的だな、と。

――前回のアイナ・ジ・エンドさんの声とは対照的な魅力かもしれません。でも、どちらもずっと聞いていたくなるボーカルなんですよね。
伊達 唯一無二の声をされていると思います。もちろん、人の声はそれぞれ違うので、みんな唯一無二の声だと思うのですが、幾田りらさんの声は聞いていてそれを強く感じます。出したくても出せない透明感のある声に憧れますし、本当にずっと聞いていたくなります。

修学旅行に行くときの気持ちは今の活動とも重なる

――「アドベンチャー」の下敷きになった「レンズ越しの煌めきを」は、ひとり暮らしの学生のエピソードでもあるのですが、伊達さんがひとり暮らしを始めて実感したことはありますか?
伊達 これはもう、日常全般にわたって「思うような生活ができない」ということですね(笑)。計画通りに行動できることが、1週間に1回あるかないか……。「今日の夜はこれをしよう」「明日はこれをしよう」と思っていても、いざそのときになってみると「今日はいいかな……」と思ってしまう。「ここに行きたい」「これがしたい」と積極的に考えることが減ってしまった気がします。もともとそういった性格なのですが、地元にいた頃は「そろそろやらないの?」と親が言ってくれたんです。そういう存在がいなくなると、気楽な部分もある反面、「怠けているなぁ……」と落ち込むこともあります。ひとり暮らしをするとこんなに変わるんだ、とびっくりしました。

――自分の中での「だらしなさの許容範囲」がどんどん広がっていきますよね(笑)。もうひとつ、「レンズ越しの煌めきを」には修学旅行のエピソードが出てきますが、修学旅行の思い出はありますか?
伊達 大阪や京都など、関西に行きました。USJもそのときに初めて行きました。どれもめちゃめちゃ楽しかったです。高校の修学旅行もコロナが流行り始める直前に行くことができました。振り返ると、現在の活動でメンバーと地方に行くときに近い感覚だったなと思います。今日やること、明日やることがきっちり決まっていて、終わりの予定も見えていますから。だから「待ち遠しいけれど、始まってほしくない」というような気持ちもありました。そういう意味では、準備をしているときがいちばん楽しかったかもしれないですね。

――旅行は予定を立てているときがいちばんワクワクする、というやつですね。
伊達 始まればもちろん、すごく楽しいのですが、1分1秒が過ぎていくなかで「もっと楽しくできたんじゃないかな」と考えてしまったりもするんですよね。だから準備中や前日、班やグループで集まって「ここに行きたいね」と話している時間がいちばん好きでした。修学旅行が終わるとそんな会話もなくなってしまうので、寂しいなと思ったり。旅行中も後半になると「あと数時間で終わっちゃう……」と、時計を見たくなくなるんです。そういうところも含めて、今の自分の活動と重なる部分があったなと思います。

いつか本心から言えるようになりたいフレーズ

――「アドベンチャー」の歌詞には「待ちに待った今日は特別な日」というフレーズがありますが、伊達さんが「特別な日」と聞いて思い浮かぶのはどんな日ですか?
伊達 やはりライブがパっと思いつくのですが、それ以外でも「これが楽しみだった!」というお仕事がけっこうあるので、このフレーズが合う日はたくさんある気がします。このインタビューの前日にも、応援してくださる皆さんと直接お会いできるようなイベントがあったのですが、すごく楽しみで、前の日はなかなか眠れませんでした(笑)。

――なるほど。子供の頃に「この日が来るのが待ち遠しい」という日はありましたか?
伊達 やっぱり週末のお休みですかね(笑)。家族と過ごすのが好きで。それに何時に起きても大丈夫ですから「超幸せだな」と金曜の夜が来るたびに思っていました。歌詞の他の部分になるのですが、落ちサビに「本当にここに来れて良かったな」というフレーズがあって、ここが本当に好きです。昨日もぼんやりとこのフレーズを思い出していて「こういう風に思えるって大事だな」と思いました。心の底から「よかった」と思わないと出てこないフレーズだと思うんです。

――それは場所だけではなくて、今の自分の立場なども含めて、ということですか?
伊達 そうです。生きていくうえで「しんどいな」と感じることはみんなあると思いますし、私自身、「自分が選んだ道は間違っていないかな」と不安になって迷うことが多いので「こういうフレーズを本心から言えたらいいな」と私の中でめちゃめちゃ響いたんです。もちろん、今の自分が選んできた道に後悔はしていないのですが、いつか心の底から「私に生まれてきてよかったな」と感じられたらいいなと思います。endmark

撮影協力

浅草花やしき
住所/東京都台東区浅草2-28-1
営業時間/10:00~18:00(季節・天候により異なります)