TOPICS 2023.06.29 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」 第9回 初めて参加したライブで記憶に刻みつけられた
きゃりーぱみゅぱみゅさんの「もったいないとらんど」(後編)

きゃりーぱみゅぱみゅの「もったいないとらんど」について語ってきた、伊達さゆりのフォト&インタビュー連載の第9回。締めくくりとなる後編では、同じステージ立つ者としてアーティスト・きゃりーぱみゅぱみゅに惹かれるポイント、そしてかつての自身のように今、ステージに憧れのまなざしを向けている人たちに対して思うところを尋ねた。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水 衣装協力/natsuko shiokawa

「飾らない」アーティストに惹かれる

――「もったいないとらんど」をライブで聞いたとき、伊達さんは11歳。その頃、きゃりーさん以外にお気に入りだった音楽やアーティストはありますか?
伊達 きゃりーさんをきっかけに、笑顔で歌って踊ることに心が惹かれていって、AKB48さんなどのアイドルさんを好きになっていきました。まだ歌詞を読み解いたり、楽曲に聞き入ったりする年齢でもなかったので、笑顔で踊っているアイドルさんがまぶしくて。録画した番組を何回も巻き戻して、「この子が本当にかわいくて!」と母親に話すと「でも、この子たちもすごく大変なんだよ」とよく言われました。でも、私は当時、どう大変なのかはわからなかったです。ずっとあとになって、大変さを感じさせないでパフォーマンスできるのがプロなんだなと思い知りました。

――きゃりーさん以外の参加したライブでとくに印象に残っているものはありますか?
伊達 またback numberさんか、と言われてしまうかもしれないのですが、つい先日も東京ドーム公演に行ってきました。きっとすごく刺さるんだろうなと思っていたのですが、やっぱり刺さりましたね。飾っていなくて――これはback numberさん以外もですが、自分は飾っていないアーティストさんが好きなんだな、と再確認しました。インディーズ時代のお話をされていて、歌詞を書いても書いても却下されて、でも自分たちがやりたいのはこういうバンドだ、という気持ちを強く持ちながらやってきた、というようなことをおっしゃっていました。それは、きゃりーさんとも通じる部分があるようにも思うんです。

――どういったところにそう感じますか?
伊達 他人にどう思われようが、自分がやりたいことを表現する。最初は受け入れてもらえなくても、続けているうちに共感する人たちが増えっていって、今の立場まで進んできたところですね。きゃりーさんも最初は「青文字系」という、いわゆるあまり男性受けしない、独創的なファッションに身を包んでいて、街を歩いていても「あの服なに?」と見られたけれど、気にせず自分が着たいファッションだから着ていた、とお話しされていました。音楽ジャンルは違いますが、そこは似ているなと思いましたし、カッコよさを感じます。

――「晴れが好き」と言えるのも「飾らない」ことのような気がします。
伊達 そうですね! 今なら素直に言えます。好きな天気は晴れです!(笑)

「伊達さゆり」個人としても、飾らないでいたい

――これまでライブを見たことがないアーティストで、行ってみたいと思う人はいますか?
伊達 BiSHさんのライブに一度行ってみたかったです。少し前の夜中にテレビをつけていたらフェスの模様が流れていて、その中に最後の野外フェス出演になったBiSHさんのステージの映像もあったんです。それを見ていたら、不思議と涙が止まらなくなってしまって。ライブには行ったことがなくて、楽曲を聞いていただけだったのですが、「行っておけばよかったな……」と思いました。全力で魂を込めて歌って踊っている姿から「伝えよう」という気持ちが画面越しにめちゃめちゃ伝わってきて、そういう部分にプロのパフォーマンスを感じました。

――伊達さん自身、現在はステージに立つ側でもありますが、きゃりーさんを含め、今までステージを見てきたアーティストの影響を受けていると感じることはありますか?
伊達 自分のことになると、意外とわからなくて。でも、もし今後、伊達さゆり個人としてパフォーマンスをする機会があれば、やっぱり飾らないでいようと思っています。MCでも、そのときに思ったことを正直に話したり、最近あったことを気軽に話したい。たとえ落ち込んだり悲しかったエピソードでも、そういうことを話してくれるアーティストさんのほうが私は好きなので、自分がステージに立ったときも、そんな風にいられたらと思います。

いつか自分を追いかけてきてくれる存在のために

――伊達さんがライブで初めてきゃりーさんを見たとき、きゃりーさんはちょうど今の伊達さんくらいの年齢ですね。となると今、10歳くらいで伊達さんのステージを見ている子供が、いずれ現れると思うのですが……。
伊達 そうか! それは想像したことがなかったです。今、初めて想像しました!(笑) でも、本当にそんな子に出会ったら、申し訳ないけどまず疑ってしまうかもしれません。素直にうれしいと思うよりも先に「本当に!?」と聞いてしまいそうです。

――まだ具体的には想像できないですか。
伊達 できないですね。今現在のタイミングで「元気をもらいました」と言ってもらったことしかなくて。デビューから3年目で「あのときこうでした」と振り返って言ってもらうことがないので、まだ想像できないのかもしれません。でも、実際にそういうことが起きたら「やっていてよかった!」という感激で、たぶん泣いてしまいますね。それからとりあえず「ご飯に行こう」と誘うと思います。そんな日に備えて、自分、ちゃんとしよう、と今あらためて思いました(笑)。endmark

撮影協力

あさくら画廊
住所/東京都足立区西保木間2-6-22
開館時間/09:00時~18:00時(水曜日休館)