TOPICS 2023.06.28 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」 第9回 初めて参加したライブで記憶に刻みつけられた
きゃりーぱみゅぱみゅさんの「もったいないとらんど」(中編)

フェイバリットのひとりであるきゃりーぱみゅぱみゅの「もったいないとらんど」がテーマとなった、伊達さゆりのフォト&インタビュー連載の第9回。中編では、初めて参加したライブ体験を振り返りながら、自身が思うきゃりーぱみゅぱみゅ楽曲の魅力について語ってもらった。

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水 衣装協力/natsuko shiokawa

学校では美術の授業がいちばん好きだった

――この連載では過去にも「3331 Arts Chiyoda」(第2回)のようなアートスペースを訪れていますが、普段、美術館に行くことはありますか?
伊達 イラストを見るのは好きで、たとえば、一見かわいい絵柄やキャラクターが描かれているけど、よく見ると人間が抱えている悩みを捉えているようなものに惹かれます。そういうものを見かけるとスマートフォンでイラストのバックボーンや作者の方について調べるのですが、しょっちゅう調べているので、SNSの「おすすめ」にもよく表示されます。ただ、実際に美術館に足を運んだことはあまりないですね。

――そういった意味では、「あさくら画廊」は伊達さんの好みにも合っていたのですね。
伊達 めちゃめちゃタイプでした。怖い表現をポップに包んでいるのもそうですし、「どうしてここにこういうものが付いているんだろう?」と考えながら見てまわるのが楽しかったです。

――学校の美術の授業は好きでしたか?
伊達 大好きでした。唯一、自分が好き勝手していい時間だったというか、人と違っていれば違うほど「いい」と言ってもらえるのが美術だったので。でも、先生にすごく褒められたとか、そういった経験があったわけではなくて、自分が納得できればそれでいい、という感じでした。誰かに理解されなくてもかまわない、という意味で楽しかったですし、いちばん成績がよかった科目も美術でした。

――そういえば、プレゼント用のチェキにも小さなイラストをよく描いていますね。
伊達 かといって、自慢できるほどほど上手なわけでもないので、いじられづらい、中途半端な感じですね(笑)。

初めてのライブ体験は「夢の世界に入っていくような感じ」

――「もったいないらんど」を聞いたのが初めて参加したライブだったというお話でしたが、そのときの思い出でとくに印象に残っているものはありますか?
伊達 じつはその日、会場に向かうまでにちょっとしたハプニングがあって、開演に間に合わなかったんです。だからライブが始まる前の独特の静寂を体験していなくて。会場に着いたときにはライブがすでに始まっていて、スタッフさんに扉を開けてもらった瞬間、きゃりーさんの声が爆音で響いてきたのをよくおぼえています。扉が開く直前までの、歌声がクレッシェンドで大きくなっていくのとあわせて、夢の世界に入っていくような感じがして、自分の席に着くまでの間に泣きそうになってしまったんですよね。

――開演に間に合わなかったから、かえって印象に残ったわけですね。
伊達 逆に、終演後のことはよくおぼえていなくて。幼かったから、ライブが終わってしまったことを受け入れられなかったんですよね。会場はもう照明がついて、公演終了のアナウンスも流れていたはずなのですが、まだきゃりーさんが出てきてくれるんじゃないかなという期待があって。家に帰るまでの「終わっちゃったな」という気分を、そのときにいちばん大好きだったアーティストさんで経験したので、「寂しい」を上回る言葉を探したいような気持ちでした。

――帰ったら帰ったで、お父さんの転勤を知らされるし……。
伊達 そうなんですよ。感情がぐちゃぐちゃで、あまりにも濃い一日でした(笑)。

――ライブを見たあとって、そのセットリスト通りのプレイリストを作ったりしませんか?
伊達 やりますね。思い出したくて、ついその日のレポや感想を追いかけてしまいます。

シリアスだけどドロドロしていない表現が好き

――「もったいないらんど」の他にきゃりーぱみゅぱみゅさんの楽曲でとくに好きなものを挙げると?
伊達 まず思い浮かぶのは「インベーダーインベーダー」という楽曲です。MVは当時のきゃりーさんの世界観が全開で、まわりのダンサーさんがひらがなの「だ」という文字を顔に付けているんです。それがすごく好きで、A4の紙に「だ」とポップに書いて、それを弟の顔に貼って「私はきゃりーちゃん役をやるからあなたはダンサーさん役をやって」と言ってひたすら踊っていました(笑)。

――ヒーローごっこのようですね(笑)。
伊達 他にも挙げるとキリがないのですが、初めて見たライブでも最後を飾った「ちゃんちゃかちゃんちゃん」という楽曲も好きです。「see you next time」や「またね」という歌詞が入っていて、きゃりーさんがよくライブの最後に歌ってくれるのですが、そういう楽曲にこのタイトルがついていて、それが似合ってしまうセンスがすごく好きです。あとは「さいごのアイスクリーム」という楽曲。最初に聞いたときは「きゃりーさんの楽曲じゃないのでは?」と思ったんです。他の楽曲と比べると音数が少ない落ち着いた楽曲で、かわいいタイトルなのですが、「私が大事に取っておいたアイスクリームを食べたのは誰!?」というような歌詞なんです。

――楽曲を聞いていると、こんな些細なことをテーマに歌っているのに、ステージで成立させてしまえるんだ、という驚きがありますね。
伊達 きゃりーさんの楽曲の歌詞は、じつは恋愛がテーマになっている、といったものもあるのですが、ドロドロしていなくて、すごく聞きやすいと思うんです。シチュエーションの解釈が豊富というか。「さいごのアイスクリーム」も、怒っている相手は友達なのか家族なのか、ひょっとしたら恋人なのかもしれない。でも、もし恋人が相手であったとしても、ドロドロしていなくて、シリアスかもしれない状況をかわいらしい日常として表現しているところが好きです。

――昨年の伊達さんのバースデーイベントでは「ふりそでーしょん」が使われていましたよね。
伊達 はい! いちばん最初に決まった楽曲でしたね。ここ(20歳の誕生日)を逃したらもう機会がないから、絶対に使いたい!と思っていました。endmark

撮影協力

あさくら画廊
住所/東京都足立区西保木間2-6-22
開館時間/09:00時~18:00時(水曜日休館)