ボーカルで心惹かれるのは「サ行」と「タ行」
――「infinity」が「初めて『音』に意識が向いた楽曲」という話を聞きましたが、テーマをもらった際には「ボーカルがパワフルで好き」とコメントが付いていました。具体的に「ここの歌い方が好き」というパートはありますか?
伊達 特定のパートというよりも、(ボーカルの)千紗さんの「サ行」と「タ行」がとくに好きなんです。私、誰かの歌声を聞いていてそんな風に感じることが多くて。もちろん、歌いまわしが好きになることもあるんですけど、「この部分の滑舌、めっちゃいいな」と思って、そこからお気に入りになったり。とくに「infinity」のようなバンド感がしっかりあるような楽曲だと、千紗さんの歯切れのいい感じがすごく合っているな、と思います。言葉の立て方や一音一音をどうやって発声しているんだろうと、そういうところが気になります。
――なるほど。子供の頃はさすがにそういう部分は意識していなかったと思うのですが、どのくらいの時期から気になりましたか?
伊達 中学くらいからですかね。それまでは自分の中で「なんでこの人のこの歌が好きなんだろう?」と考えても「なんとなく歌詞がいいから」とか「歌声が好きだから」という風に、理由をひとつにまとめちゃっていた気がします。でも、友達とそういうことを言いあったりはしないですよね。「私、この人の『サ行』が好きで」とか(笑)。
――それはそうですね(笑)。中学時点でそういう聞き方をするのは、将来エンジニアやオーディオマニアになったりする子くらいの気がします。
伊達 なんかうれしい(笑)。
新生活を始めた「後輩」たちへのアドバイス
――「infinity」はTVドラマの主題歌として出会ったとのことですが、他にドラマの主題歌で印象に残っているもの、好きなものはありますか?
伊達 結構ありますね。『アタシんちの男子』からちょっと時代が飛びますが、『凪のお暇』というドラマを高校のときに見ていました。黒木華さんが主演で、miwaさんの「リブート」という楽曲が主題歌だったのですが、これが大好きで、学校への行き帰りにずっとリピートして聞いていました。これも毎回、ラストのいいところで、それもイントロがない楽曲なので、miwaさんの歌声から始まるんです。流れるたびに「もう終わりかー!」と思っていました。もうひとつは、これも比較的最近ですが、『この恋あたためますか』というドラマの主題歌で、SEKAI NO OWARIさんの「silent」という楽曲。ドラマは冬の設定で、クリスマスあたりのお話なのですが、「silent」もシャンシャンとクリスマスらしい鈴の音色から始まるんです。何年か経っても、聞くとドラマの内容を思い出してしまうので、音楽の力ってすごいなと思います。
――この記事は4月の更新予定なので、新社会人や進学したばかりのタイミングで見る読者もいると思います。新生活を始めた「後輩」たちにアドバイスをするとしたら?
伊達 東京で暮らし始めて今年で4年目になるんですけど、お部屋は陽が当たる場所がいいなと思います。日向っていいな、と上京してあらためて思いました。あとは、ずっと家族と暮らしてきて、ひとり暮らしになるといきなり会話が少なくなるので、家族と話せる携帯電話のありがたみを感じました。携帯電話の充電は大事だと思います。夜は絶対に充電してから寝てください!(笑)
「置いてきた傘と地図」に込めた意味
――今回は「手さぐりの旅」書籍版の発売直前の記事になります。伊達さん自身が命名したタイトル「置いてきた傘と地図」の由来を教えてください。
伊達 少し長いかなと思ったのですが、やっぱり連載名の「手さぐりの旅」にかけて、旅に関係しているものがいいなと考えました。楽曲のタイトルでもそうなんですけど、初見で「どういう意味なんだろう?」と考察できるようなものが好きなんです。あとは撮影した当時、悩んでいた私が詰まっているなと思っていて。「傘」も「地図」も旅に出る人にとっては大事なものですよね。傘は雨を防ぐために必要ですし、地図も正解の道のりを探す手助けになってくれます。このふたつを置いてくるということは、本当に無計画で進んでいるということなんですけど、忘れてきちゃったというわけじゃなくて、あえて置いてきたことにしたいなと思って。「悩んでもやもやした時期があっても、それを受け入れて向き合っていくことで成長できるよ」という思いを込めて、このタイトルにしました。
――じつはタイトルの深い意味はスタッフも聞いていなかったんですよね。撮りおろしパートの撮影日は天気予報で雨になりそうだったので傘を用意していたのですが、当日は晴れて結局使わなかったので、それを反映したのかと思っていました(笑)。
伊達 そうではないんですよ(笑)。他にもいくつか案があって、どれにしよう?と迷いました。他にバースデーイベントのタイトルなども自分で考えさせてもらったのですが、案自体はわりとスッと出てくるけど、そのあとどれにしようか悩んでしまうことが多いですね。
――いずれ他のタイトル案も聞いてみたいです。書籍の完成が間近に迫ってきたタイミングで、あらためてどんなところが見どころだと思いますか?
伊達 過去のお写真も撮りおろしも含めて、「Febri」さんの撮影では他の撮影ではあまり見せない表情を使っていただくことが多くて、それがすごくうれしいんです。遊び心が本当にたくさん詰まっているなといつも感じています。だから、見ていて飽きが来ない内容になっているんじゃないかなと思いますね。
■『伊達さゆりフォト&インタビューブック ~置いてきた傘と地図~』4月22日発売!
伊達さゆりさん20歳の誕生日から「Febri」にて好評連載中の「手さぐりの旅」が書籍になります!
連載第13回までのロングインタビューを完全収録しつつ、写真はすべて未公開のアウトテイクを⽤いて再構成。
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