TOPICS 2024.05.23 │ 12:00

伊達さゆりの「手さぐりの旅」 第17回
SEKAI NO OWARIさんの「yume」を聞くたびに思い出す、先生の言葉(中編)

第17回ではSEKAI NO OWARIの「yume」がテーマとなった声優・伊達さゆりのフォト&インタビュー連載。中編では楽曲の印象や魅力を掘り下げつつ、子供の頃のおもちゃ事情(?)について。今の自分に通じているという、小さい頃に夢中になった遊びとは?

取材・文/編集部 撮影/松本祐亮 ヘアメイク/三反理沙子 スタイリング/佐野夏水

聞いているときの感情によって違う感じ方をする気がする

――前編で触れてもらったように「yume」は明るい曲調で、小学生でも聞きやすい楽曲だと思います。ただ、歌詞は捻(ひね)くれているというか、意味深ですよね。
伊達 先生が「みんなでおぼえよう」と歌詞をクラス全員分コピーしてくれて、そのとき初めて歌詞を見たのですが、「死んでいくんだね」という最後のフレーズが目に留まって「え、どういうこと? 悲しい楽曲なの?」と戸惑いました。当時は読んでも理解が全然できなかったので、わからないまま歌詞をおぼえて歌っていましたね。

――曲名は「yume」なんですが、歌詞中では「夢」と「ユメ」の表記が混在しているんですよね。
伊達 そうなんですよね。「夢」と「ユメ」はどう違うんだろう? でも、それも当時は気づかなかったですね。今だったら「何か意味あるのかな?」と考える気がするんですけど。

――実際に今聞くとどう感じますか?
伊達 励まされている楽曲なのか、自分の過去の心情を書いている楽曲なのか、聞いているそのときどきの感情によって違う感じ方をする気がします。たとえば、卒業式のシーズンに聞いたら、きっと学校生活に当てはまるだろうし、将来の進路や夢のことで悩んでいるときなら、その不安とか期待に重なるだろうし。でも、誰か相手がいるような楽曲なのかなと思いますね。もしかするとその相手は人ではないのかもしれないですけど……ひとりで歌っている感じがあんまりないから。だから温かみを感じるのかもしれないです。

――たしかに、誰かに当てているような雰囲気はありますね。実際に小学校を卒業するときに歌ったのでしょうか?
伊達 卒業式の前日に、クラスのみんなと歌いました。本当に卒業にあわせて歌うと感動するんですよね。今でも聞くと胸がジーンとします。

あの場所に行くときに必ず聞く「私的テーマ曲」

――それにしても学校で「クラスのテーマ曲を決める」というのは初めて聞きました。
伊達 ですよね。私も小学6年のときだけで、そのあとにも先にもなかったです。だから当時はびっくりしました。

――クラスで曲を選ぶことがあるとすれば、合唱コンクールくらいでしょうか。
伊達 合唱コンクール、中学の頃にありましたね。好き嫌いが分かれる行事のひとつだと思うんですけど、私は大好きでした。「聞こえる」という楽曲を歌ったんです。戦争や環境問題をテーマにした歌詞で、メロディもゆっくりした重い感じの楽曲なんですが、それでもみんなと歌うとすごく楽しくて、ずっと練習していました。

――「これをやるときにはなぜか頭の中にこの楽曲が流れてしまう」といった「私的テーマ曲」はありますか?
伊達 原宿のあたりに行くときには、きゃりーぱみゅぱみゅさんの「Super Scooter Happy」と「ぎりぎりセーフ」という楽曲を聞きます。あとは「Drinker」という楽曲。この3曲は原宿に近づくと絶対に聞いています。

――それは初めて原宿を訪れたときからの習慣だったりしますか?
伊達 初めて行ったときには音楽を聞けるものを持っていなかったんですよね。だから頭の中でずっと流していました(笑)。

ぬいぐるみを集めてなりきり遊びをしていた思い出

――もう少しおもちゃにまつわる話を聞きたいのですが、子供の頃に遊んだおもちゃで印象深いものはありますか?
伊達 小学校の高学年になると、ゲームで遊んだりすることが多くなったのですが、小さい頃はぬいぐるみが好きでした。家中にあるぬいぐるみを、大きいのから小さいのまで全部集めてきておままごとみたいなことをしていましたね。もちろん、ぬいぐるみはしゃべらないので、自分がその子になりきって声を当てていく、ということをやっていました。幼稚園にもぬいぐるみがあったですけど、そこでは友達に見られるのが恥ずかしくてできませんでした(笑)。家で遊んでいるときも、私がボソボソひとりでしゃべっているから母親が見にくるんですよ。「何やってるの?」って。そうすると、やっぱり恥ずかしくてすぐに片付けてしまいました。自分がやっていることをあまり見られたくない、知られたくない、という思いがあるんですよね。それは小さい頃から今までずっと続いていますね。

――一方で自分の世界を作ったり、表現する楽しさもその頃に知ったということですね。
伊達 そうですね。今振り返ると、普通のおままごとよりも随分ぶっ飛んだ設定だった気がしますね。当時も子供心にそう感じていて、だから誰かに聞かれるのが恥ずかしかったんだと思います。母親もたぶん「おままごとっぽいけど、会話を聞いているとおままごとじゃないんだよな……」と気になって見にきたんじゃないかな(笑)。でも、今になって小さい子供を見ていると、みんなすごいなと思います。何にもとらわれていないから、発想が豊かですよね。

――欲しかったけど、買ってもらえなかったおもちゃはありますか?
伊達 『星のカービィ』のぬいぐるみ。手のひらサイズよりももう少し大きいくらいのカービィのぬいぐるみがあったんです。カービィって変身するじゃないですか。だからぬいぐるみも剣を持ったバージョンとか、魔法を使っているときのぬいぐるみが何パターンも出ていて。全種類欲しいと思って「サンタさん」にお願いしたのですが、結局違うものをもらったことがあります(笑)。カービィ以外にもいろいろな能力を使えるキャラクターが好きで、自由帳に絵をたくさん描いていました。

――私もレゴブロックで買ってもらえなかったおもちゃの代わりを作って遊んだりしていましたね。
伊達 私も通っていた保育園にレゴブロックがありました。中でも長くて細いブロックをひたすらつなげて剣みたいにするのがすごく好きで、そのブロックをいつも探していました。カッコいい、「戦う系」のものに憧れていたのかな。『仮面ライダー』シリーズなんかも見ていましたし。endmark

関連情報

【撮影協力】
東京おもちゃ美術館
住所/東京都新宿区四谷4丁目20 四谷ひろば内
営業時間/10:00~16:00(15:30最終入館)
※入場にはチケットの購入が必要です
休館日/毎週木曜日(木曜が祝日の場合は翌日振替)
Webサイト/https://art-play.or.jp/ttm/
 

■好評発売中!
『伊達さゆりフォト&インタビューブック ~置いてきた傘と地図~』

伊達さゆりさん20歳の誕生日から「Febri」にて好評連載中の「手さぐりの旅」が書籍化!
連載第13回までのロングインタビューを完全収録しつつ、写真はすべて未公開のアウトテイクを⽤いて再構成。
さらに本書だけの撮りおろし&新規インタビューもたっぷりと詰め込み、全224ページの大ボリュームでお届けする完全保存版です!